パソナグループは、自然と共生する循環型社会の実現に向けて、淡路島で大型コンポスターを導入し、島内の飲食施設から出る生ごみの堆肥化に取り組んでいます。
今回のSONAERUは、淡路島で様々な施設を展開するパソナふるさとインキュベーション 三ツ田梓 代表取締役社長と、本プロジェクトの責任者であるパソナグループ アドミ本部 副本部長 関谷英武 執行役員、コンポスターの運用を担当するAwaji Nature Farm 生産事業部 村田善紀 部長に、コンポスター導入の背景や、パソナグループが目指す循環型社会のあり方などを伺いました。
自然循環型社会の実現に向けて

▲(左から)パソナグループ 関谷英武 執行役員、Awaji Nature Farm 村田善紀 部長
―今回のプロジェクトについて教えてください
関谷(敬称略、以下同):
淡路島で自然循環型社会を実現すべく、今年3月、Awaji Nature Farmが運営する農家レストラン「陽・燦燦(はる・さんさん)」に大型コンポスターを導入しました。これにより、パソナグループが島内で運営する9つの飲食施設(「Auberge フレンチの森」3施設、「海神人の食卓」2施設、禅リトリート施設「禅坊 靖寧」、「miele the garden」、「オーシャンテラス」、「陽・燦燦」)から出る生ごみなどの堆肥化による、食品残渣ゼロを目指しています。

▲導入されたヤンマー製の大型コンポスター
―そもそも「コンポスター」とは何でしょうか
関谷:
コンポスターとは、野菜くずや食べ残し、コーヒーかすなどの生ごみや落ち葉などの有機物を微生物の働きにより発酵・分解し、堆肥(コンポスト:生ごみなどを積み重ね、発酵させてつくった有機肥料)を自然な仕組みで作る容器や装置のことです。
こうした廃棄物を活用した堆肥づくりは環境にやさしく、また、できた堆肥は栄養が豊富で畑などの土壌改良の効果も期待されます。
―今回の大型コンポスター導入によって作られる堆肥はどのように活用されるのですか
関谷:
淡路島の飲食施設から出たごみを堆肥化し、パソナ農援隊の農場などで活用する予定です。できた堆肥は淡路島の畑で野菜などの栄養となり、その野菜が収穫されて、またレストランで提供されるという自然循環を目指しています。

▲Awaji Nature Farmで採れた野菜

▲収穫した野菜を調理し、みんなでランチしている様子
この日はパソナグループの経営企画チームが循環型農業を体験
淡路島で農を通じて地球の未来を守る

―どのようなきっかけで、今回淡路島にコンポスターが導入されたのですか?
村田:
これまでもAwaji Nature Farmでは、パソナグループの淡路島の各飲食施設や社員の方々、そして地元の方々とも連携し、堆肥作りを行っています。
出荷や栽培、レストランの調理など施設運営過程で発生する生ごみなどの回収。社員の家庭においては、コンポストバッグなどを活用し、食品残渣を持ってきてくれる人もいます。また、地域の方々とも連携し、広葉樹の落ち葉、もみ殻、米ぬか、馬糞・牛糞・魚のアラ等を回収しています。

▲レストランで出てくる食品残渣を回収する様子

▲魚のアラ回収
これらの廃棄物を使用し、丁寧に発酵させて質の良い堆肥に変え、再び畑に還し、自然の摂理に逆らわない、微生物を活性化させた土づくりを行い、作物を作って収穫を行うという循環型農業を実践しています。

▲調理が終わった野菜の残渣を土と混ぜている様子

▲パソナ農援隊 ウェルネスファーム
パソナグループ社員が所属部署のエリアを手入れしている様子
こうしたAwaji Nature Farmやグループの各社・各店舗等が行ってきた、地球環境に良い取り組みをより加速させるためにも、電動型のコンポスターを導入しました。
―今回「大型」のコンポスターを導入したということですが、通常のコンポスターとの違いを教えてください。
村田:
新たに導入する大型コンポスターは電動の装置となり、主な違いは「スピード」です。
通常、廃棄物を堆肥化するのに一次発酵、二次発酵を経て、8カ月くらいかかりやっと堆肥ができます。今回の大型コンポスターは一次発酵の工程を機械で行います。機械を使わない場合の一次発酵処理は通常約3~4か月かかりますが、それを約1か月に短縮することができます。
また、毎日約100kgの生ごみ等を分解することができ、その「スピード」と「量」が最大のメリットです。
屋外で生ごみ等を堆肥に入れると鳥獣害(カラス、ネコ、イノシシ、イタチ、タヌキなど)が夜中に荒らしに来たりもするので、その被害がなくなることも利点ですね。
今月3日から運用を開始しており、毎日、生ごみ等を投入する際に、分解の状況などを見て、土の中の微生物・菌の状態を確認し、二次発酵に移すタイミングなどを調整しています。
▲回収した食品残渣を投入

▲コンポスターで微生物がいる土と混ぜ、分解します

▲生ごみ投入から24時間後の様子
―一次発酵の時間が装置で大幅に短縮できるのですね!二次発酵はどうするのでしょうか。
村田:
二次発酵はこれまでどおり、外で行います。装置で一次発酵処理を行った生ごみの成分に、落ち葉、もみ殻、米ぬか、牛糞、馬糞などを加え二次発酵を進めていきます。二次発酵は、土の中にいる菌(大腸菌、サルモネラ菌)を死滅させる工程になるので、空気・光・水分量(60%)による温度調整(最低60℃以上)が非常に重要となり、加える米ぬかや馬糞の配合計算なども熟練した技術が必要です。
Awaji Nature Farmでは、これまでの経験を活かして、丁寧な二次発酵を行い、質の高い堆肥を作っています。
最近、Awaji Nature Farmの堆肥が品質良いと地元の農家さんたちにも評判で、堆肥をお渡しし、代わりにもみ殻をもらうなど、地元の方との交流も増えています。

▲土の温度を測定中

▲二次発酵を行います

▲高温発酵中

▲適切に堆肥の発酵が進むよう、定期的に、
全体をかき回し、混ぜるなどの切り返し作業を行います
―どんな想いで日々取り組みをされていますか。
村田:
こうしたコンポスターの運用を通して、これからも地球の未来を守るため、限りある資源を大切にし、引き続き環境保全活動取り組んでいきたいと思います。
そして、「ごみを減らす」だけではなく、淡路島で「農」を通じて「食や健康に繋がる取組み」を地元の方やグループ各社と連携していきたいですね。
将来、淡路島で、沢山の方が畑に来て土を触り、旬の野菜を収穫して調理して食べる!そして、出た残渣はまたコンポストに入れる、という循環のサイクルを体験していただきたいです!

自然の恵みに感謝し、環境問題を「自分ごと」として捉える

▲パソナふるさとインキュベーション 三ツ田 梓 代表取締役社長
―本プロジェクトへの想いを教えてください
三ツ田:
大阪・関西万博に出展するパビリオン「PASONA NATUREVERSE」には、「NATUREVERSE=自然を尊重し大切にする世界」を創るという想いが込められています。淡路島での事業展開では、日々、自然とテクノロジーの調和、自然の恵みに感謝すること、そして自然と共生することの重要性を感じています。
コンポストは環境問題全体で見れば小さな取り組みかもしれません。しかし、この小さな取り組みの積み重ねによって、美しい地球環境を守る大きな力になると信じています。
―今後の計画を教えてください(今後目指していること)
三ツ田:
今回のコンポスター導入により、まずは9つの施設の堆肥化に取り組んでいますが、ゆくゆくは淡路島で展開するパソナグループ全施設から出る生ごみ等の堆肥化、食品残渣ゼロを目指したいと思っています。
また、パソナグループの淡路島の各レストランでは「地産地消」にもこだわっています。
農林水産省のデータによれば、日本のフードマイレージ(※)は、他国と比較すると非常に高く、この数値の削減は環境負荷の低減につながります。具体的な手段のひとつとして、食材の輸送時に発生するCO2低減に向けて、「国産の食材を選ぶ」「地産地消に協力する」ことがあげられます。パソナグループでは淡路島にある24の飲食店舗で、淡路島産の食材を積極的に利用する「淡路島食材こだわり宣言店」の認証登録を受けており、美味しいだけでなく環境にもやさしい経営を推進しています。
「地産地消」そして「パソナグループ全施設から出る生ごみ等の堆肥化、食品残渣ゼロ」などの取り組みを通して、パソナグループとして淡路島全体で100%自然循環型社会の実現を目指します。
(※)フードマイレージ
「食料(フード)の輸送量(t)」と「輸送距離(マイレージ)(km)」をかけあわせ、食料の輸送にかかる環境負荷を数値化した指標のことです。
▼参考:農林水産省ホームページ 「フードマイレージについて」
https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kikaku/goudou/06/pdf/data2.pdf
―最後に、この記事を読んでいる皆さんへメッセージをお願いします。
三ツ田:
環境問題に対して、「誰かの課題」と捉えるのではなく、「自分の課題」として考え、出来ることからチャレンジしていただきたいです。
今回のコンポスター導入をきっかけに、日々の生活の中で、ものを「捨てる」から「活かす」に変えられることはないか、そもそもごみを出さないようにするにはどうしたら良いのか、といったことを「自分ごと」として考えていただき、全員で持続可能な社会の実現を目指していきましょう。