
パソナグループでは、8月19日(金)に株主総会が開催されましたが、日頃より株主の方々に向けて様々な情報開示を行っています。従来、企業価値を判断する際の基本は財務的な情報でした。しかし近年、「非財務情報」の情報開示に社会的な要請が高まっています。
そこで今回は、非財務情報の中でも「環境に関する情報開示」にフォーカス!パソナグループ 岡田智一 執行役員 経営企画部長と、パソナグループ 根本恵介 IR室長が、非財務情報の開示とパソナグループの環境への取り組みについて、3つのステップから楽しくわかりやすく解説していきます。
▲(左)パソナグループ 岡田智一 執行役員 経営企画部長
(右)パソナグループ 根本恵介 IR室長
Step 1. まずはキーワードを抑えよう!
【なぜ?】非財務報告の開示が求められるようになった“キーワード”
根本
近年、社会全体の動きとして企業に様々な情報開示が求められ、日本企業においても、戦略や業績などの「財務報告」と、ESGやCSRなどの「非財務報告」を一体のものとして企業の価値を表現する「統合報告書」の発行が年々増えています。
そもそも、「非財務報告」とは何でしょうか?また、なぜ環境に関する情報開示が求められる時代になったのでしょうか?関連するキーワードについて、簡単に紹介します。
・非財務情報
企業が投資家や株主、債権者などに対して開示する情報のうち、財務諸表などで開示される情報以外の情報。経営課題や事業リスク、気候変動への対応や人的資本の情報など。有価証券報告書やCSR報告書、統合報告書、サステナビリティレポートなどで報告されます。
・コーポレートガバナンス・コード
上場企業が行う企業統治(コーポレートガバナンス)におけるガイドラインとして参照すべき原則・指針を示したものです。2021年の改訂により、気候変動によるリスク情報の開示が実質的に義務化されました(開示しない場合は、その理由を記載しなければならない)。
・有価証券報告書
金融商品取引法で規定されている、事業年度ごとに作成する企業内容の外部への開示資料。2022年6月の開示拡充により、サステナビリティ情報の開示の重要性が高まっています。
【一度は聞いたことがある?】“環境”に関するキーワード
岡田
国内外において脱炭素に向けた動きが加速し、特に上場企業においては、気候関連財務情報の開示や、サプライチェーンも含めたカーボンニュートラルの実現を目指した対応が求められています。そのため、企業の気候変動に関する対応は、投資家が投資を決定する上で重要な判断材料になりました。
それでは次に、“環境”に関する情報の開示に関連するキーワードについて紹介します。
・ESG投資
「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の3つの要素も考慮した投資のこと。従来主流とされてきた財務情報のみならず、非財務情報も含めて両方の観点から投資先を決める方法。
・気候関連財務情報開示タスクフォース “TCFD”
投資家が適切な投資判断をする上で必要となる気候関連財務情報の開示を企業に促すことを目的に、金融安定理事会(FSB)が設置。年次の財務報告において、財務に影響のある気候関連情報の開示を推奨する報告書を2017年6月に公表しました。
▼環境省「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ」
https://www.env.go.jp/earth/TCFD_guidbook.pdf
【キーワードを踏まえて】パソナグループの取り組み
根本
パソナグループは、政府主導の「チーム・マイナス6%」プロジェクトが開始された2005年より、グループ各社の役職員で構成する「環境委員会」を設置。次世代に美しい地球を残すために、様々な環境保全活動に取り組んできました。
2021年には、サステナブル経営のあり方を発信し、社会から信頼されるロングセラーカンパニーであり続けるため、「パソナグループ環境イノベーション戦略」を策定。先ほどキーワードにも出てきた「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」への賛同も表明しています。
さらに、「環境マネジメント推進会議」を発足させ、気候変動シナリオ分析および気候変動によるリスクと機会における事業インパクトの明確化を実施。そしてこの度、その結果を踏まえ「TCFD」提言に沿った気候関連情報を開示しました。
①ガバナンス:気候関連リスクと機会に関する経営者の役割など組織のあり方
②戦略:気候関連リスクが事業や戦略、財務に与える影響
③リスク管理:気候関連リスクに対する識別や評価、管理状況
④指標と目標:気候関連リスクと機会の評価や管理に用いる指標と目標
こうした、時代に合わせたスピード感のある動きがまさにパソナグループらしく、「社会の問題点を解決する」という企業理念を体現していると思います。
では早速、TCFDに沿った具体的な気候関連情報について、上記①~④のフローを基に紹介していきます。
Step 2. 実際の開示内容を基に、パソナグループの気候関連情報を知る!
【①ガバナンス】どのような管理体制で連携しているのでしょうか?
岡田
「ガバナンス」を、日本語では「管理体制」「統治力」「支配体制」などと言い換えますが、パソナグループでは以下のような体制で、環境への取り組みを促進しています。
【環境マネジメント推進会議】
気候変動シナリオ分析、および気候変動によるリスクと機会、事業インパクトの明確化を実施。さらに、そこで得られた情報の開示を行うなど、気候変動課題における現状確認と対応の方針、アクションプランを策定
【リスクマネジメント委員会】
気候変動のリスクマネジメントに関する審議を実施
【内部監査部門】
各部門や関係会社に対する環境監査を実施
【取締役会】
気候変動に関する重要な事項について、環境マネジメント推進会議からの報告を受けて、適切な助言を行うモニタリングを実施
【②戦略】具体的な環境戦略は?
根本
環境への取り組みやその情報開示を行ううえで、気候変動がもたらす“リスク”と“機会”の両方の観点を持つことが重要です。パソナグループでは事前にリスクと機会を特定したうで、2030年における事業への財務的影響を、定量的かつ定性的に検証するシナリオ分析に着手しました。
▶▷シナリオ分析のフロー
▶▷検証対象
▶▷具体的なリスクと機会
▶▷検証結果
検証の結果、直接的に事業に影響を及ぼす重大なリスクは特定されず、間接的影響においても当社の売上構成比は特定の業界への偏りがないため、同様に重大なリスクは特定されませんでした。
また、物理的リスクにおいても、BCP対策を既に進めていることや、働き方改革の推進、コロナ対応としてリモート環境が整っていることから、事業に影響を及ぼす重大なリスクは特定されませんでした。
【③リスク管理】未然に危機を防ぐための体制づくり
岡田
パソナグループでは、経営に重大な影響を及ぼす危機を未然に防止し、万一発生した場合も損失の極小化を図るため、リスクマネジメント規程を定め、リスクに関する統括組織としてリスクマネジメント委員会を設置しています。
また、環境マネジメント推進会議において、気候変動によるリスクや関連する法規制や事業に影響を及ぼす自然災害を特定し、気候変動への対応を議論。その内容をリスクマネジメント委員会で全体のリスクマネジメントプロセスに統合しています。
さらに、その内容については定期的に取締役会で報告し、対応状況の把握と進捗の管理、見直しを実施することで、気候変動リスクに対するマネジメント体制を構築しています。
▼参考 パソナグループ 気候変動への対応 (TCFD)
https://www.pasonagroup.co.jp/koken/tcfd.html
Step 3. 今後の取り組みと“情報開示”で得られること
【今後】パソナグループのこれからの取り組みは?
岡田
環境への取り組みや情報開示が求められる一方、多くの企業ではCO2排出量可視化のノウハウ、それに伴う煩雑な作業を行うリソースが不足しているのが現状です。さらには従業員へのSDGs教育も課題のひとつとなっています。
そこでキャプラン株式会社ではこの春より、幅広い講師ネットワークや環境教育のノウハウを活用して各企業の課題に合わせてカスタマイズした「環境研修サービス」、CO2排出量の可視化や関連業務を支援する「BPOサービス」を提供する「環境経営支援トータルサービス」を開始しました。
今後もパソナグループ全体として、情報開示から得た気づきを事業活動にも活かしていきたいと思います。
▼「環境経営支援トータルサービス」HP

【まとめ】環境への取り組み、そして情報開示の重要性とは?
パソナグループは「環境宣言」(2006年策定、2021年改訂)を基に、社員への環境教育や社会貢献委員を中心に年間2,500名を超える参加者が環境保全活動に取り組むなど、様々な環境保全活動を行ってきました。これだけ多くの社員が環境問題に関心を持って、取り組んでいることは、私たちパソナグループの大きな強みとなっています。
▼Social Activist PASONA 2022
パソナグループの環境への取り組みをp.25~p.27で紹介
“非財務情報の開示”は、ステークホルダーの方々をはじめ社会全体に向けて、私たちの企業姿勢や取り組みを伝えることのできる貴重な機会だと捉えています。
これからもパソナグループでは、将来を担う次の世代に健全で美しい地球環境を残すべく、様々な環境保全活動を行いながら、
情報開示という機会を通じてパソナグループの企業価値を発信し、様々なステークホルダーの方々と共に豊かな地球環境を守っていきたいと思います。