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台風シーズン到来!風水害への備えを ~物の準備と心の準備~

梅雨が明けると、いよいよ夏本番。台風やゲリラ豪雨、線状降水帯が発生しやすい季節がやってきます。
まさに現在も、7月25日より山形県や秋田県では記録的な大雨が降り、最大級の警戒を求める大雨特別警報が発表され、河川の氾濫や浸水など被害が相次いでいます。過去を振り返ってみても、7月は1年の中でも大きな被害をもたらす風水害が特に多い月ではないでしょうか。

【過去に起こった歴史的な豪雨災害の例】
・2021年7月「熱海市土石流災害」死者20名以上
・2020年7月「熊本豪雨」死者60名以上
・2018年7月「西日本豪雨」死者200名以上
・2017年7月「九州北部豪雨」死者・行方不明者40名以上

災害には「事前の備えが大切」だと言われますが、具体的に何をどのように準備し、備えたらよいのか分からない方も多いのでは。

そこで、今回の「SONAERU」では、暴風・豪雨などの風水害に備えるため、事前にできる物と心の準備について、防災のプロフェッショナルである、元消防士のパソナグループ グループアドミ部 オペレーション室 ファシリティマネジメントチーム長 千束正宗さんと、元自衛官のパソナグループ HR本部 倉石治一郎さんにお話しを伺いました!

パソナグループ 千束正宗チーム長
東京消防庁で約17年勤務し、消防車の隊員から、特別消火中隊の小隊長、指揮隊の通信担当などに従事していました。火災、水災などの出動はもちろんのこと、東日本大震災の際は当日から5日間、緊急消防援助隊として現地で救助に当たった経験もあります。
昨年10月にパソナグループへ入社し、現在は淡路島で主にパソナグループ関連施設の防犯や防災に関する施設管理を担当しています。

パソナグループ 倉石治一郎さん
自衛官として約30年勤務し、定年退職後は自治体の防災官や、私立大学にて危機管理教育に従事していました。自衛官時代には、防衛大学校での危機管理や安全保障の教育、災害時の派遣経験などがあります。
今年3月からパソナグループに入社し、淡路島で防災や危機管理関連業務を担当しています。

Q. 豪雨・暴風で起こる災害と、気を付けておくべきことを教えてください

千束(敬称略、以下同):
私は消防勤務時代、豪雨による土砂崩れで村に繋がる1本しかない道路が寸断され、孤立地区となった山間部の現場に派遣されたことがあります。その時、特に大切だと感じたことが2点あります。
1つ目は「自助」「共助」「公助」のうち「共助」にあたりますが、「地域のコミュニティ」の大切さです。自然の脅威は、どのように予防するかということはもちろん大切ですが、実際に起きてしまってからは成すすべ術がありません。そのため、いざという時に助け合える協力体制を作っておくことがとても重要です。
2つ目は「通信手段の確保」です。私が派遣された現場は山間地区ということもあり、特に電波が入りにくい場所でしたが、災害時には場所に関係なく都市部でも、多くの人が一斉に電波を使うことで、携帯電話が繋がりにくくなる可能性があります。また、電線・電源ケーブルの切断や基地局の停電など、通信インフラのトラブルにより、固定電話も繋がらない可能性があります。そのような時のために、パソナグループでは全国16箇所の拠点に衛星電話を設置しています。皆さんには是非、そのことも知っておいていただければと思います。

Q. 豪雨や暴風情報が事前に分かっている時は、事前の対策が取れると思いますが、外出中に急なゲリラ豪雨などに遭遇した場合は、どのようなことに注意し行動すべきでしょうか。

千束:
まず、当たり前にはなりますが、崖や川の近くには近づかないでください。そして、道を歩く際には、マンホールから水が噴出する場合があるので、注意する必要があります。また、道路に水が溜まっている時は道路の真ん中を歩いてください。道路の端は側溝や穴など危険が沢山あります。
車を運転している場合は、アンダーパスを避け、安全な場所に一時停止することをお勧めします。

Q. 風水害に備えて、日常からできる物と心の準備について教えてください

~物の準備~

倉石:
私からは特に命に関わる2点をお伝えします。
1つ目は「常用薬」です。家から出られない場合や避難が数日間継続することになった場合に備え、個々に応じた薬をすぐに持ち出せるようにしておくことが大切です。
2つ目は、お子さんがいらっしゃる方は「ミルク」の備えをお願いします。大人は水だけあれば、なんとかしばらく生活できます。しかし乳幼児にとって栄養不足・水分不足は非常に危険です。普段から少し多めに購入し、予備のミルクをご準備ください。

千束:
まず水や食糧に関する部分で、私自身ローリングストックを行っています。先ほどミルクのお話がありましたが、うちには生後9カ月の赤ちゃんがいますので、常に予備のミルクを3か月分程度は確保できるように買い足すことを意識しています。
また、大人はプロテインなども少し多めに買い置きしておき、何かあればそこからでも栄養を取れる、という状態にしています。今は、水で溶ける完全栄養食など色々な商品が出ているので、そういったものもお勧めかもしれません。また、家族の人数×最低でも三日分の水と食料などを備えています。

そのほか、家の中で意識していることは、お風呂の水は常時貯めておき生活用水にすること。そして、これから家を建てる方に少し検討頂きたいのは、タンク式トイレです。今はおしゃれなタンクレスのトイレが主流ですが、タンク式トイレは災害時に断水しても、タンクに貯まった水で3回程度はトイレを使用することが出来るので、宜しければぜひ考えてみてください。

あとは、災害用の持ち出しリュックとスニーカー・長靴を玄関に用意しています。リュックには水食糧、アルミブランケット、簡易トイレ、ライト、ラジオ、電池、充電器、手袋、簡易調理セットなどは入れていますね。趣味がキャンプなので、車にも最低限生活できるような簡易キャンプグッズを常時積載しています。他にも色々と救出用の道具やおむつなど赤ちゃん用品など入れているものもありますが、一般的なところでご紹介しました。
災害用持ち出しリュックなどは、ご自身で準備しておくことも大切ですが、最低限必要な用品一式が入っているものも販売されているので、そちらを購入いただき、しっかりと中身を確認したうえで、個々に合わせて必要なものを追加で入れておくことも良いかと思います。

~心の準備~

倉石:
自分の住んでいるところが、どう危険なのか―。例えば土砂災害危険区域や洪水の危険性がある地域もあると思いますので、改めて、ご自身の住んでいる市町村のハザードマップを確認してみてください。家のある場所・通勤経路・通学経路と照らし合わせ、何が危険なのかを考え、予測し、避難先なども事前に確認して家族と共有しておくことが、心の準備に繋がると思います。
また、紙に書いておく、ということも大切です。皆さんはご家族の電話番号を覚えていらっしゃいますか。お子さんがいらっしゃる方は、お子さんはご自宅やお父さん・お母さんの電話番号を知っていますか。自分と家族が離ればなれになり、連絡が取れない状況というのは非常に不安を募らせます。スマートフォンが使えないときにでも、ご家族とつながれるよう、電話番号やその他必要な情報はメモに書き留めて、携帯しておくことが重要です。

最後に1点紹介させてください。心の準備として「マイ・タイムライン」を作成しておくことをおすすめします。例えば、台風が来る時間を 0 時間と規定をして、事前に何時間前にどういう行動をすればいいのかということを準備しておく、というのがタイムラインという考え方になります。マイ・タイムラインの作り方は各都道府県のホームページで「マイ・タイムライン」と検索すると出てくるので、ぜひ参考にして作成してみてください。

千束:
一人ひとりが、実際に災害が起こった場合を想像し、「こういう時は、どうしたらいいのだろう」という疑問をそのままにせず、一つひとつ答えを出していく。そのように考えて、準備することが一番大事です。
また、倉石さんからもお話がありましたが、家族と防災に関する意識を共有しておくこと。例えば、家族の中で別々の場所で被災をした場合は「ここで集合しよう」などと事前に話し合い、お互いがその共通意識を持つことが大切だと思います。

▼参考:国土交通省HP 「マイ・タイムライン」
https://www.mlit.go.jp/river/bousai/main/saigai/tisiki/syozaiti/mytimeline/index.html


ご自身の命、そして大切な人の命を守るために、今日から出来る“物と心の準備”に取り組んでみてはいかがでしょうか。


配信日:2024年7月29日